らくもびと共同で、2015〜2017年、東京メトロ発行のパンフレット「あしたのメトロ」の企画・協力を行いました。「あしたのメトロ」は、東京メトロが発行する、各路線ごとに、沿線情報や歴史、現在の取り組みを発信する小冊子で、沿線各駅で配布されたものです。
この中で地理人研究所とらくもびは、幅広い利用者に向けて届く各路線のキャッチコピーや、路線や沿線の全体像や印象の伝え方、内容を提案しています。利用者の鉄道や地域に対する関心度、知識はさまざまです。関心あるいは知識がある人は、自発的に情報を収集するでしょう。重要なのは、そうでない人にどう届けられるかでした。そこで、沿線のイメージや全体像が伝わるキャッチコピーや、見開きの沿線全体図の内容検討を中心に、小冊子の企画、ページの構成を企画、立案しました。
沿線の全体感がシンプルに伝わるキャッチコピー
たとえば、2015年発行の銀座線は「地上からすぐ、銀座線はまちそのものの地下1階」と題して紹介しています。銀座線は日本で最初にできた地下鉄で、地下の浅いところ(多くの場合地下1階)に作られており、まちから近い距離にあります。そして、各駅でその街に合わせたコンセプト、デザインで駅の内装がリニューアルされており、地下にいても地上の街の雰囲気を感じられるようになっています。地下浅いという歴史的な経緯と、現在の駅リニューアルは別の流れでしたが、合わせて捉えると周辺の街の地下1階とつながり、駅空間も街の様相を反映しようとしている、つまり「街の地下1階」として、人が行き交う空間を作ろうとしているとも捉えられます。こうした特徴をシンプルな言葉で表現すべく、キャッチコピーの提案を行いました。
また、2016年発行の千代田線では「メインストリートの一歩奥にある落ち着き。千代田線は大人を満たすゆとりの道。」として紹介しています。これは千代田線が「裏庭」的な路線であることを伝えています。上野ではなく湯島、東京駅ではなく二重橋前、銀座・有楽町ではなく日比谷、六本木ではななく乃木坂…と、多くの人を集める大きな街の少し奥に駅はあります。賑わう街の裏庭を結んだ路線で、銀座線や丸ノ内線、日比谷線といった古い路線に比べると直線的で所要時間は速いのも特徴です。裏庭的な奥ゆかしさとともに、役立つのは「上野や東京駅、有楽町、六本木周辺に足を運ぶときに、実は使える」ということです。
沿線を俯瞰した視点と、等身大で見られる風景の情報
2016年発行の丸ノ内線では、地下鉄では珍しく地上区間の多い丸ノ内線の車窓に注目し、車窓から見られる風景と、なぜ地上と地下(トンネル)を行き来するか、台地と低地を行き来する路線の特徴について、地形と風景写真で追っています。
必ずしも歴史や地形の話をするのが王道という訳でも、必ず知るべきことでもありません。しかし、利用者にとって乗っていて何気なく見ている風景が、少しでも記憶に残るものとなれば、または沿線の駅周辺へ、街や地域への興味関心が広がれば、沿線の広報誌としての役割を果たすものとなるでしょう。あくまでこれは一例ですが、あらゆる切り口や伝え方を尽力できればと思っています。
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